ジェロントロジー研究所は学内の共同研究や学外との研究連携を深化させ、健康長寿社会の構築に資する学際学問領域(ジェロントロジー)を発展させることをミッションとしています。また、老いや高齢者に関する情報・教育を発信し、日本の超高齢社会を豊かにする新たな文化の創造を目指しています。私達は研究所開設を内外に宣言するとともに、ジェロントロジーを社会に啓蒙する目的で、2018年9月23日(日・祝)に青山キャンパスの本多記念国際会議場でジェロントロジー研究所開設記念キックオフシンポジウムを開催しました。300名近い方の一般来場を賜り、学内外の5名による講演と指定討論、さらに来場者を交えたパネルディスカッションを行いました。
はじめに平田普三所長に日本の超高齢化の現状とジェロントロジーとは何かを概説していただき、研究所の設立趣旨やミッションについて講演していただきました。
次に、本学理工学部のロペズ・ギヨーム先生に最先端のウェアラブル技術について講演していただきました。ウェアラブル技術とは小さな機器を身体や服に装着して呼吸や脈拍などのバイタルや行動の記録をとる情報技術で、Apple Watchなどのスマートウォッチはその代表格です。ロペズ先生はハンズフリー型の機器で咀嚼を計測し、咀嚼の少ない人がより多く噛んで食事するよう自然に促す自動フィードバックシステムを開発されており、食習慣の改善から高齢者の健康を増進する近未来イノベーションを紹介していただきました。
3人目には本学の三木義一学長に、超高齢社会へ向けての本学の挑戦と研究所への期待を語っていただきました。
4人目には本学文学部の日置俊次先生に宮崎駿氏の映画『となりのトトロ』における少女と老女の描写対比に見える日本の高齢者像から、長い人生経験に基づく高齢者の知恵や技術が人間教育や文化の発展にいかに活かされているかを講演していただきました。日置先生の大学での現代アニメーション論の講義は学生に人気が高く、学生時代に聞けなかった日置先生の現代アニメーション論を聞くために来場したという声も来場者アンケートにありました。
5人目には山野学苑の山野正義総長にご登壇いただき、美容福祉学をジェロントロジーに昇華させた美齢学を中心に、美意識を追求することで高齢者が自らの生き方を創造し、社会に経済発展をもたらすという日本の近未来像を講演していただきました。高齢者に光を照らす山野総長の言葉「夕日は朝日と同じように美しい」が多くの人の心に残りました。
桜美林大学副学長の長田久雄先生の討論・総評の後、フロアからの質問を受け付けるパネルディスカッションに移りました。来場者から、超高齢社会と向き合うことの重要性を強調する声が多くあがる一方で、ジェロントロジーが社会に浸透していないことを指摘する声もあり、本研究所のミッションを再認識しました。
本研究所は明るく豊かな健康長寿社会の実現に貢献できるよう活動を続けます。今後も一般向け講演会を開催しますので、みなさまにも新しい学問であるジェロントロジーに親しんでいただけますと幸いです。